薫子様、一大事でございます!


「いえっ、別にどこも悪くないです」

「ならいいけど」

「……あの、手は……」

「手?」


これですと、握られたまま右手を持ち上げた。


「……あぁ、これ? カコちゃんの歩くのがあんまり遅いから。はぐれたら困るだろ? 携帯だって持ってないし」


……ごもっともなご意見です。


コクンと頷いた。


「それに、こうしていた方が自然だし」


……私の態度は不自然だと思うけれど。


「どうしてもイヤなら、無理にとは言わないけどね」

「あ、いえ、そういうわけじゃ……」