薫子様、一大事でございます!


追いついた私が聞くと、北見さんは目の前の書店を指差した。


そこに入ったということらしい。


……ふぅ。
ひとまず良かった。


「モタモタしてたら見失うだろ。俺たちも中に入るぞ」


――え?


不意に繋がれた手。

驚いて呆然とする私をグイと引っ張った。


もつれるようにして足を出すと、北見さんが「自然にしてるんだぞ」と耳元で囁く。


頷くことで精一杯だった。


だって、初めてのことなのだから。


……男の人と手を繋ぐことすら。