薫子様、一大事でございます!


しばらく道路を挟んで追っていた私たちは、信号のある交差点で道路を渡り、井上さんと同じ歩道を歩き始めた。


着かず離れずに。
そう北見さんに言われたものの……。


井上さんの足が思いのほか速く、楽勝で着いて行っている北見さんと私の距離が次第に開いてきてしまった。


不自然じゃないように。
ごくごく普通に。

そう歩くと、男の人の足には適わない。


――置いていかれちゃう。


そう思ったときだった。

北見さんが少し先で立ち止まったのだ。


どうしたんだろう……?
もしかして、井上さんを見失っちゃった?


「井上さんは?」