薫子様、一大事でございます!


えっと……この人は違うし、メガネさんも違う。


――あ、この人だ。


「き、北見さん、そうです。あの彼です」


オペラグラスを覗いたまま、その姿を目で追う。


北見さんは急いでデジカメのピントを合わせ、そこで一枚シャッターを切った。


「うーん、ちょっとボケたか?」


やっぱり古すぎたかしら……。


北見さんは手帳に走り書きで“18:25 帰社”と記すと


「よし、行くぞ」


アイスコーヒーを一気にストローで吸い込んで席を立った。


「ま、待ってくださーい」


私も慌ててその後を追った。