薫子様、一大事でございます!


「出掛けに飛びつかれたからだ。毛は払ったつもりだったんだけどな」


洋服をもう一度確認する。


「ふふふ。本当に懐かれていますね」


私にも滝山にも、二匹ともそこまではしないのに。

北見さんが出かけるとなると、「行かないで」という風に足元にまとわりついたり、肩めがけてジャンプをしたりするのだった。



「あ、あの人か?」


北見さんの声につられて、勤務先の出入口を見る。


……えっと、どの人だろう。


ちょうど同じタイミングで3人の男性が出て来て、どの人かすぐに判別ができない私。


ついさっき買ったばかりのオペラグラスを覗き、手元の写真と見比べる。