薫子様、一大事でございます!


「はいはい、お茶でもいかがでしょうか」


そこに入ってきたのは、トレーにお茶を載せた滝山だった。


「すみません……」と頭を下げる星野さんに、優しい笑顔を向ける。


「熱いうちにどうぞ。熱い日本茶は格別ですからな」


ハハっとひと笑いして、そそくさと後ろへと下がった。


一瞬険悪になった空気は、滝山のおかげで払拭されたのだった。


「あの……彼が違うというのなら、本当にそうなんじゃないですか?」


星野さんの思い違いということだって。
彼の言葉を信じてもいいんじゃないかしら。


けれど、星野さんは


「……そうとは思えません」


目を伏せて首を振った。