薫子様、一大事でございます!


湿った潮風が、夏の始まりを感じさせる。

もうまもなく梅雨も明けて、暑い夏がやってくる。
私が家を飛び出して、3つ目の季節だ。


「カコちゃんも寝てみろよ。気持ちいいぞー」

「そうですね」


北見さんに倣って、堤防へ横になった。


太陽に照らされ続けたはずのコンクリートは、予想に反してひんやりとしていた。


薄いブルーの空を小さな雲がゆっくり流れていく。



……ほんとに気持ちいい。
目を閉じたら、そのまま眠ってしまいそう。



うつらうつらしそうになっていると


「どうして探偵事務所なんてやろうと思ったんだ?」


北見さんから不意に質問を投げかけられた。