「そんなに激しく同意しなくても大丈夫だから」
クスっと鼻を鳴らして笑う。
「す、すみません」
「じゃ、行くぞ」
ブルンとエンジンをひとふかし。
大きく弧を描くようにバイクの向きを反転させると、事務所前の道路に滑り出た。
大きな幹線道路へ出ると、バイクはぐんぐん加速していく。
耳障りなはずのエンジン音が、不思議なほどにそうじゃなくなる。
家出という非常事態だったせいか、滝山の後ろに乗ったときのことは無我夢中でほとんど覚えていないけれど、そのときに比べれば、二度目だけあって少しはこなれた気がする。
……北見さんに密着しているという異常事態を除いては。



