薫子様、一大事でございます!


「それに、今のこの事務所の懐事情で、牛肉が買えるとでも?」


――うっ。


それを言われると、とても辛い。


痛いところを突かれて何も言えなくなってしまった。


「まぁまぁ、お二人とも」


宥めに入った滝山。


「北見さんのおっしゃることはごもっともでございます。薫子様、今回は鶏肉といたしましょう」

「……そうね」


承諾する以外に手立てはなかった。


お金がないのは事実。
それが、こんなに惨めなことだなんて。


……はぁ。


大きな溜息が口から出た。