甘ちゃんだと言われることに反発する気持ちもあったけど。
何より、カレーの一つや二つ作れないことで結婚できなくなるなんて、絶対にイヤだもの。
「やる?」
探りを入れるように私を見つめる北見さんに、両手で拳を作って「やります」と告げた。
「野菜は揃ってるから、あとは肉だな」
「そうですね。牛肉を買ってこなくちゃ」
「牛肉!? カレーと言ったら鶏肉だろ」
「えっ、鶏肉ですか?」
「そうだよ。カレーは鶏肉に限る。牛肉なんて邪道だ」
「じゃ、邪道だなんて」
ビーフカレー以外なんて、食べたことがないわ。
カレーと言ったら、ビーフ。
それで育ってきた私には、北見さんの言うことが理解できなかった。



