(キュリオ様…なんてお顔を…)


民や聖獣を等しく愛する悠久の王の愛はどこまでも深く、全てに向けられているものだ。そして等しく愛しているからこそ個人に優劣をつけることもなく、彼にとって特別な存在などないのだ。


「キュリオ様、その方は姫ですかな?それとも王子ですかな?」


孫を見るような優しい瞳で背後から声をかけてきた初老の大臣にキュリオは振り返った。


「この愛くるしい表情は…きっとプリンセスだよ」


幸せそうにキュリオは言葉を発すると、目の前の扉をあけて中に入ってしまった。


彼の部屋に入ることが許されている者は極わずかで、本来ならば王の部屋の周辺を歩くことでさえ恐れ多いのだ。そして今日出会ったばかりであろうこの赤ん坊を部屋に入れたとなると…今までとは違うキュリオの心境が容易にみてとれるのだった。