―――…夜も更け、虫たちの奏でる音色だけが聞こえる時分…―――


うっすらと目を開いたのは…やはり幼子のほうだ。


彼女のぼやけた視界にうつるのは、ずっと優しくだきしめて笑いかけていてくれていたきれいな男のひとだった。とじた瞳を縁取る長い睫毛(まつげ)が影を落とし、整った顔立ちとうつくしい銀髪が並みならぬ品の良さを漂わせている。


じっと彼の顔を見つめてみるが、起きる気配はなさそうだ。


(……)


そして気がつけば、やんわりとまわされた彼の腕を背中に感じ、大きな安心感が彼女の心を満たしていく。


(あたたかい…)