「…あそこに倒れてる女を助けろってか…」 男は幼子の斜め後方で倒れている血まみれの女官に視線を向ける。 「…生憎だが俺に治癒の力はないぜ」 「…何なのよあんたたち…」 自分の存在を完全に無視した二人のやり取りにウィスタリアのプライドはズタズタに引き裂かれた。 「…どいつもこいつも…」 ―――カチャ… 足元に散らばった花瓶の欠片に変わり果てた自分の姿を映しながら…ウィスタリアは鋭く尖ったそれを拾い上げた―――