湯に濡れた彼の手がそっと幼子の顔に触れ、優しく頬をなでる。ところが、いつもならば可愛い笑顔を向けてくれるアオイだが…今日は許してくれないらしい。


彼女の真ん丸な瞳は瞬きもせず、じっとキュリオをとらえて離さない。



「アオイには叶わないね…」



小さく笑みをこぼしたキュリオは独り言のように呟いた。



「君が皆に愛されるのは嬉しい…」



「だけどそれが…不快でもあるんだ」



「…?」



言葉の意味がわからないアオイは目をぱちくりさせ、キュリオの言葉に耳を傾けている。




「…どうしたら早く二人きりになれるんだろうってね。広間にいた時ずっとそればかり考えていたんだ」




「それで気が付いたら…ここにいたってわけさ」




「…んぅっ」




キュリオの言葉に語尾を強める言葉を返すアオイ。正確には彼女が何と言っているのかまではわからないが、キュリオなりに理解出来ているようだ。





「そうだね…考え方を改めなくてはいけないね…」






「…一体私はどうしてしまったんだろう…」






今までにない屈折した考えに…キュリオ自身も苦しんでいるようだった。しかし、無意識にそう思ってしまうのだから止めようがない。





「…我を忘れる程…考え事をするなんて…」





「今まであっただろうか…」