「わ、私は悠久の使者として参ったアレスと申します。我が王より書簡を預かって…」


アレスの言葉が終わらぬうちに女のヴァンパイアの手がスッと伸びて、アレスの腕をつかんだ。


「ぼうや、そんなことより私たちと遊ばない?!」


グイと引っ張る女の力はとても強く、アレスは一歩門の中へと足を踏み入れてしまう。


「何を…っ!!」

彼の小さな体はバランスを失い、前のめりに大きく傾いた…


「アレスッ!!」


とっさに後方にいたカイが彼の手を掴んだその時…
アレスの手に握られた加護の灯が焼け付くような激しい光を放った―――まばゆい銀色の光に視界を奪われたアレスがきつく目をつぶると、


「ギャァァアアアッッッ!!!」


最後に聞こえたのは女ヴァンパイアの断末魔で、徐々に光がおさまっていくと腕に感じたあの女の手の感触はなくなっていた―――