その日の帰り道。俺はいつものように莉緒の自転車の後ろに乗りながら終始(しゅうし)不機嫌だった。
「なんで杉野に頼んだんだよ」
今日は俺のクラスに限らず、どこのクラスも選手決めをしたらしいし、俺の不機嫌の理由を知ってるくせに莉緒はずっと平然としている。
「だって頼まなきゃ玲汰のやる種目なんて全員参加の綱引きか玉入れだろ」
「それで十分だろ」
そう吐き捨てると莉緒はキイイといきなりブレーキをかけた。
「……っ。バカ!急に止まるなって前に……」
「自信がないんだろ」
強打した鼻を押さえながら莉緒を見ると、その顔はどこか呆れていてまた俺はムッとした。
「……ああ、そうだよ。悪いかよ」
どんなに頭の中でシミュレーションしても恥をかくことしか浮かんでこない。すると莉緒は露骨に目を細めた。
「あのな、別に誰も玲汰に期待なんてしてないし、プレッシャーなんて感じる必要もねーんだよ。普通に走って普通にゴールすればいい話だろ」
「………」
「はあ……。よし、分かった。じゃあ明日から練習するぞ」
「れ、練習って?」
「本当に勘の悪いヤツだな。少しは察しろよ」
結局、具体的なことはなにも教えられないまま、その日は家へと帰った。



