今日1日こいつはあからさまに俺をシカトしていた。だからその声すらまだ聞いていない。

俺は上履きを乱暴に押し込んで靴を履き替えた。そして莉緒の横をスッと通りすぎる。

スタスタと歩いて、だけどあまり足は前に進まない。

なんなんだよ。お前。

本当に極端すぎんだよ。


「おい」

気づけば俺は足を止めて声をかけていた。

莉緒はまだスマホをいじったまま。聞こえなかったはずはない。まあまあ声は響いていた。

ムカついたから、また呼んだ。


「莉緒」

するとやっとあいつは顔を上げた。

俺の負けだよ。そもそも放課後に友達と遊ぶタイプでもないし、こんな目立つ場所で座り込むようなヤツでもない。


俺を待ってたんだろ。

それで俺から声をかけてくることも分かってた。

だって顔を上げた莉緒は〝してやったり〟って顔をしていてマジでムカつく。


「勉強教えろ」

ふて腐れながらそう言うと莉緒はゆっくりと立ち上がった。


「教えてください、だろ?」

ニヤリと笑って、やっぱりお前は世界一可愛くない幼なじみだよ。