あいつは律儀に約束を守るタイプじゃない。
『分かった分かった』とか適当に納得したふりをして次の日にはなに食わぬ顔をして平然と俺の前に現れるヤツなんだ。
だからこんなに静かな朝は久しぶりだった。
学校に着くとすでに1限目が終わっていて丁度休み時間だった。
授業の途中で教室に入ってくる不良に憧れたこともあったけど、あの静かな空間に入る勇気はないから休み時間で本当によかった。
「お、池内きたんだ。遅刻なんて珍しいじゃん」
こんな時、誰からも話しかけられないのはやっぱり虚しいから杉野がいてくれてありがたい。
「立花さんと喧嘩したの?」
なんだか聞き覚えがあるセリフ。
「なんで?」
「いや、池内が来ないからたまたま廊下を歩いてた立花さんに聞いたら『さあ』って言われてさ。お前たちいつも一緒に登校してくるし喧嘩でも……」
「だから喧嘩はしてないって」
「なんでキレてんだよ」
「あ、それはその……ごめん」
母ちゃんと同じことを聞いてきた杉野に怒ったんじゃなくて、あいつは俺が遅刻すると分かってたんだろうなと思ったらちょっとムカついただけ。



