「腹壊しても知らないからな」
「玲汰より胃腸は丈夫だから平気だよ」
ああ、言われてみればコイツはなにを食っても腹のひとつも壊さないヤツだった。そこもなんだか猛獣っぽい。
「ほら」
「……っ!」
ペダルを漕ぎ出すと思いきや莉緒は急に振り返って、袋を破いたアイスをそのまま俺の口へと入れた。
しかもそれは俺が好きなチョコクッキーのアイス。
「帰るぞ」
もうひとつのアイスを自分の口に入れた莉緒はようやく自転車を走らせた。
あいつが食べてるアイスはチョコミント。俺はあの清涼感が苦手だけど莉緒は昔からアイスといったらチョコミントしか食べない。
変わったものもある。
変わってないものもある。
俺たちの関係はいつまで続くのだろうか。
次に自転車が止まったのはうちの前。
莉緒の家はもう少し先にあって近所ではないけれど、徒歩で10分くらい。
「腹壊すなよ」
さっきの揚げ足を取るように莉緒が言う。
「俺の胃腸も成長してんだよ」
嘘。わりと今でも頻繁に腹は壊す。
莉緒はフッと鼻で笑ってペダルに足をかけた。
そして……。
「明日から別々に行こうか」
「え……?」
「朝も帰りも玲汰がそうしたいなら別々に行こうよ」
莉緒は俺の返事を待たないまま「じゃあ」と走り去って行ってしまった。



