『とりあえず着替えを取りに私だけ家に帰ってお母さんが病院の先生と話して病室に戻ると莉緒がいなくなってたの……!』
姉ちゃんが電話の向こうで声を詰まらせる。
『腕の点滴が外されてたから、目が覚めて自分で外したんだと思う』
『………』
『まだ足取りもおぼつかないだろうし、行くとしたら玲のところしかないと思って……っ』
それを聞いて俺は勢いよく立ち上がった。
『分かった。俺も探してみる!』
電話を切ったあと、そのまま夏の日差しが照りつける外へと飛び出した。
本当は色々と気づきはじめていた。
姉ちゃんの慌てぶりも、親交があるのに莉緒の母ちゃんが俺や俺の家族になにも言わないことも。
あいつの遠くを見つめる視線も。
俺を変えようと、必死になってくれたことも。
その消えてしまいそうな儚い表情の意味に気づいていた。
だけど、あいつはなにも言わないから。
意地っ張りだし、強がりだし、可愛げがないし。だから例えしつこく聞いたとしても莉緒は『なんでもねーよ』って笑うようなヤツなんだ。
だからこそ、決めてた。
もしも、あいつがすべてを話してくれたら……。
もしも、俺にだけ、その弱さを見せてくれたら、
今度は俺が守ろうって。
俺があいつの支えになろうって、そう決めてた。
額に汗が滲む中、莉緒が行きそうな場所を探してみたけど、どこにもいない。
息を切らせながら俺は再び、ポケットからスマホを取り出した。
探すのに夢中になって気づかなかったけど、画面には見慣れない表示。
〝留守番電話のメッセージが一件あります〟
再生ボタンを押すと、耳元であいつの声が響いてきた。



