「じゃあ、俺は帰るよ」
姉ちゃんにキャリーケースを渡した。
「うん。夏の間はいるから暇な時はお茶しようね」
「はは。高校生なんて毎日暇してるようなもんだよ」
そう言い返して、歩き出そうとした時。
「……れ、玲!」と何故かひき止められた。
振り返って、姉ちゃんと目が合って、その指先が戸惑うように動く。
「ほ、本当はね……」
姉ちゃんがなにかを言おうとすると、それを遮るように音がした。よく見ると玄関のドアが開いていて、そこにいたのは部屋着を着た莉緒だった。
「お姉ちゃんお帰り。早く荷物入れなよ。お母さんも連絡がないってずっと心配してた」
「あ、ああ、ごめん。寄り道しちゃって。じゃあ、玲またね」
姉ちゃんはキャリーケースを持ち上げて、家の中へと消えていく。
莉緒の視線が俺に向いた。
なにかを言いたそうに、だけどちょっと不機嫌な顔をして。「早く帰れ、バーカ」と俺を睨み付けて勢いよくドアを閉めてしまった。
……なんなんだよ。
ひとり虚しく残った俺はぶつぶつと文句を言いながら家へと帰った。



