「……大丈夫だよ、柳瀬さん」





腕を掴んでいた手が、そっと離れて優しい声が聞こえた。

まるで小さな子をあやすようで、強がっているのがバレてるんだなって思う。





「例え柳瀬さんが逃げようとしたって、持田が離してくれないだろうから。それに、持田に捨てられたら俺が慰めてあげる。

ーーだから、柳瀬さんは後悔しない道を歩んで」




例えどんな道を選んだって私は、その先に海がいなきゃ後悔する。

私が後悔しない道、それは海が私と一緒に歩いてくれる道だから。





「……ありがと、市原くん」


「いーえ。なら俺は退散しよっかな。厄介なナイト様が追い付いたみたいだし?」





ほおを緩めて、おどけるように言った市原くんの後ろに、走ってくる海が見えた。



追いかけてきてくれたこと、そして一人だということに安心した私は、不安そうな顔をしている海を待った。