「彼は呪いの力を武器に、世界を自分の物にしようとしていました。
アニメや映画なんかでよくある話ですが、カゲロウはそれを実際にやろうと思っていたのです。
世界を永遠に自分の物にする。 そのために彼は、不老不死の水を口にしました」

「えっ……ちょ、ちょっと待ってください。 不老不死の、水……?」

「えぇ、不老不死の水です。 それを一口飲めば永遠の命を手に入れ、飲んだ当時の姿を永遠に保ち続けることが出来ます」




……不老不死。

それこそまさに『アニメや映画の世界』だ。

けれど薄暮さんは真剣そのもので、嘘を言ってるような顔ではない。


……幽霊という非科学的なモノがあるんだから、不老不死の水も、存在している……?




「不老不死となったカゲロウは、同じく不老不死となった仲間を殺して回りました」

「……ふ、不老不死なのに、死ぬんですか……?」

「寿命が来て死ぬとか、病気で死ぬとか、そういうものが無いという意味での不死ですので、殺されれば死にます」




……なるほど。

自分の体を若いままに保って何百年と生きることが出来るけれど、殺されれば死ぬ。

天災で死ぬ可能性だってあるし、事故に遭って死ぬこともある。……ということだろうか?


……でも、どうして薄暮さんは不老不死のことを知ってるんだろう?

カゲロウが不老不死の水を飲み、仲間を殺して回っただなんて、まるで見てきたかのような言い方だった、よね……?


……まさか薄暮さんは……、




「……薄暮さんって、もしかして……」

「えぇ、僕はカゲロウと共に不老不死の水を飲んだうちの一人です」

「……っ……」


「不老不死となった人間の中で生き残っているのは、今は僕だけになりました」