僕が、晴乃を忘れるなんて、そんなこと、あるわけがないじゃないか。


最期に考えてくれたのは、僕に覚えていてほしいっていうことだったんだな。


これは、晴乃からの最後の贈り物なんだ。


晴乃。忘れられないハロウィンをありがとう。とてもびっくりしたけれど、もう晴乃のハロウィンが味わえないと思うと、やっぱり悲しいよ。なんだかんだで、楽しみにしていたのかもしれないな。


晴乃、たくさんの忘れられないハロウィンを、ありがとう。


僕は、電話で明乃を慰めて切った。そして、今年晴乃のために用意していたお菓子で、カボチャの絵がついたものを取り出した。それは、幼稚園でもらっていたような飴だった。


飴のセロファンをはがして、口に入れると、甘酸っぱい味が広がった。晴乃に渡すはずだった飴は、涙の味がしたけれど、舌に心地よく、僕は晴乃の声と姿を、記憶から引っ張り出しながら、うとうとと眠りについた。


Memory and memoria!


(覚えていてね、何度でも!)


(了)