ハロウィン。クリスマスと並んで、どこか浮かれた気分になる時期だ。コンビニにはカボチャの可愛いお菓子が並び、雑貨屋を通り過ぎると、女の子たちがカボチャや魔女のモチーフをかたどった商品に群がっている。

だが、僕はこの時期が心底恐ろしい。それは、幼なじみの晴乃(はるの)のせいである。


「ゆうちゃん、ハッピーハロウィン!トリック・オア・トリート!」


こう言いながら、目隠しをしてきた幼稚園時代は可愛いものだった。かわいいものが好きな先生たちが、ハロウィンの時期になると、お昼寝の後のおやつに、カボチャが描かれた飴をくれたり、仮装をさせたり、工作でジャック・オー・ランタンを作らせてくれたりして、これが晴乃のお気に入りになったのだ。僕も付き合い、晴乃の声としぐさで彼女とわかるものの、目隠しされたらわざと間違い、おやつを少し分けてあげたものだった。


「ゆうちゃん、実は引っ越すの」

これは、小学生の時のハロウィン。僕はびっくりして、真剣になって、母に晴乃を引き取ってほしいと頼んだが、夜には晴乃がおばさんとやって来て、いたずらだったことを謝った。


思えば、これが晴乃の「ハロウィンどっきり」の始まりになった。


「実は私、男なの」


これは、中学生の時のハロウィン。彼女は、これを成功させるべく、日に何度も牛乳でプロテイン剤を流し込み、おなかをこわして病院行きになった。病院でも、「実は男で、性転換した」と繰り返す彼女は、全く懲りていなかった。


高校の時のハロウィンは、今考えても身震いする。


「ゆうちゃん、私、ゆうちゃんの子供ができたの」


もちろん僕たちは清い関係で、手くらいは幼稚園の時に握ったかもしれないが、子供がどうとかそういう関係には全くなっていなかった。それで、笑い飛ばせばよかったのだが、はったりで僕は、


「そうか。名前は何にする?」


と言ってしまった。ああ、若気の至り。そうして彼女はその気になって、想像妊娠という事態に発展した。おなかは少し大きくなり、赤ちゃんグッズを買い込み、育児の本を読み、誰にでも「赤ちゃんができた」と言って回った。それは高校で問題になり、親も含めて話し合いが持たれ、僕はひたすら謝り続けることになった。どうして僕が、なんて思いながら。産婦人科に行かせて、事実が判明するまで、僕はどれだけ悩んだだろう。妊娠していないと分かってからも、晴乃といえばけろっとしていた。。