あの赤い部屋は一番会いたい人の名前を書くことで、脱出できると同時に会いたい人に会える仕組みになっている。




その時、死んだものの名前を書くか、生きている者の名前を書くかで自分の生死が決定する。





書く名前は誰でも良いわけではなく、会いたいと本気で思う人でなければならない。




それらのルールを踏まえたうえで。




もしも、美和が名前を書くとしたら誰の名前を書くだろうか。





美和の肉親はすでに他界。親戚とも遺産争いで絶縁状態。





美和が心を許しているのは僕が知る限り、僕と綾乃と良太だけだ。





けれど良太も綾乃もすでに死んでいる。




美和が会いたいと思う人間は僕を除いて全て死んでいるのだ。





つまりだ。





僕と美和が今からあの部屋に行けば、もう彼女は生き残る術はない。





彼女があの部屋を出るには死んだものの名前を書くしかないのだから。






つまり、彼女が死んだ誰かの名前を書かない限り、僕は美和とあそこで永遠に時を過ごせるのだ。






まぁ仮に。



万が一彼女があの部屋から逃げ出そうと、死んだ誰かの名前を書いたとしよう。



僕との永遠の時間に嫌気が差し、自ら死を選んだとしよう。



それでも何一つ問題はない。




なぜなら美和が死んだ誰かの名前を書いてあの部屋から出た後に、僕が彼女の名前を書きさえすれば、僕はあの世で彼女と再び会うことが出来るのだから。