綾乃は、うーんと唸りながら少しうつむいて考えている。


が、答えはすぐに出たようだ。



「そっか。うん・・・。そうかもしんない。出口といえる出口も他にないし」



「だろ? それともここでずっと2人で暮らすか?」



「冗談やめてよ。何でも手に入るってとっても便利だけど、正直それはそれでつまんないよね。やっぱ欲しいものは努力して手に入れないとね」



座っていた綾乃はすっと立ち上がり、「じゃあ、私も書いてみるね」と言い、貼紙のほうを向いた。




「誰の名前を書くの?」




綾乃は小さな声で答えた。





「・・・弟」




「弟? 綾乃は一人っ子だろ?」




ううん、と綾乃は長い髪を揺らしながら、首を振った。




綾乃はぽつぽつと自分の過去を話し始めた。