桜ノ雫 ~記憶編~


「!!」




しかし、黒い影は斬れなかった。



影と影の属性は相性が悪いからな…。



それに影には物理的な攻撃が効かない。



冷静になって考えれば早いが、それ程俺は動揺しやすくなっているのか。



否、動揺せざる得ないだろう?



目の前で



自分の 好いた人 が苦しんでいるのに。



雪莉は覚えていないかもしれない。



いやきっと覚えてはいない。



俺は何度もあんたの優しさに触れ、そして支えられて今があるんだ。



《鬼の血》に支配られそうになった時も俺の中にいる《鬼の正体》に気付いた時も一番苦しいはずのあんたが、それでも俺のそばにいてくれたこと。




「闇夜に眠りし月光の光。

全てを浄化してしまえ、月光火」




そう唱えた時琶音の影が取れた。



やはり、雪莉にくっ付いているのは本体か。



俺は素早く琶音を安全なところへと移した。



こういう時はユウが分析してくれるんだが…。