桜ノ雫 ~記憶編~




「遥〜!」




「…ユウ」




空から降りて来たのは背中に翼が生えている人。



まずいっ!



私は直ぐに九尾の変幻をといた。




「遥、早く上に上がりますよ!

冬紀が危ないです!」




「まさか、あの魔犬に一人で

相手をしているの?!」




「いいえ…。

もう一人側に…」




「もう一人ってもしかして輝?」




「え?

あ、そうです」




輝が危ない!




〝ムム。

魔犬とやらは本来こんな人里には

おらぬ妖怪…。

それがなぜ…〟




「うわぁ!

な、なんか増えました…!」




〝失敬な!

お主も鳥じゃろう!〟




「話している場合じゃないよ!

急がないと輝達が…!」




〝しかしこの崖を上がるのは

難問じゃぞ?

儂らは飛んで行けるが…姫は飛べぬ〟




そうだ…。



私は飛べない…。




「あ、それでしたら僕にお任せを♪」




と言うと鳥の人は自分の翼から羽を一枚抜いて「ふぅー」と息を吹きかけた。



すると羽は大きくなり私と黒狐の人が乗れるくらいになった。




〝おぉ!

これはすごい。

じゃが、どうやって上まで

あげるんじゃ?〟




「それはですね♪」




と言うと鳥の人は懐から天狗の団扇を出した。