「私は姫じゃないよ。
姫だったのはお母さんなんだから。
それに、お母さんは
妖界から降りて人と暮らしたから
もう姫じゃないんだよ?」
〝いやいや!!
あの美しい姿は妖界でなくとも姫で
ある事をいやでも認識させる
ほどのものじゃ。
雪莉姫の方が美しいがのぉ♪〟
「またそんなこと言って…。
お世辞が上手なんだから。
褒めても何も出ないわよ?」
〝本当のことだよぉ〜。
姫〜!〟
「あの…。
ありがとうございます」
私は黒狐の人に向き直ってお礼を言った
「あぁ。
あんたが助かってなによりだ…」
〝これ!
無愛想なやつじゃな!
雪莉様は必死に儂達に頼んだのじゃぞ?
お主を助けたいから妖力を下さいと〟
〝雪莉姫はこの世のどんな奴より
優しんだぞ!〟
フクロウの妖怪と狸の妖怪が翼と尻尾をペチペチしながら全身全霊で話していた
私は恥ずかしくなって
「こ、コラ!」
としかった。
「黒狐の人が困るでしょ?」
「…知っている」
え?
「あんたが誰よりも優しい事。
ずっと昔から知っていた」
そう言った黒狐の人の目は光り輝いていた。
