桜ノ雫 ~記憶編~


「妖怪返りは妖力が半分以上減ると

その人の本来の姿に戻ってしまう…。

雪莉姉さんは桜九尾の妖力が

強いから姿は桜九尾ってこと?」




「恐らく…」




「今は遥兄さんがたしてくれた妖力で

なんとか起きていられるけど…

多分長く持たない…」




いったいどうすれば…。



陰狼と闘う前に雪莉が消えてしまう。



俺は千年桜のすぐ下に両手をついて座り込んでいる雪莉を見た。



九本の尻尾の先は透けていてぐったりと垂れている。



雪莉自身も眠らないように一生懸命目を開けている。



雪莉の代わりとなる命…。



それを与えれば雪莉は助かる。



でもそれは雪莉にまた新たな傷を増やすだけ…。



雪莉自身がまずそれを望まない。




「…作戦があるんだけどいい?」




静かな沈黙を破ったのは躬如だった。




「姉さんをあえて眠らすんだ。

この木は今は千年桜になった。

つまりこの木の側で静かに眠ると

千年桜の妖力が姉さんに送られる。

そしたら姉さんは一度だけ

目を覚ますことができる」




「確証は?」




「…あるよ」





躬如はなんのためらいもなくそう答えた。