桜ノ雫 ~記憶編~


「遥兄さんこっち!」




躬如が指差す方を見るとカレンが倒れていた。



どういう事だ?



何故カレンまで妖力を失っている?



カレンは雪莉に取り付いているいわば守護妖。



雪莉が力を失うとカレンも失うのか?



だがさっきまでカレンは元気だった。



何故急に?



俺はぐったりとして虫の息のカレンを抱きあげた。



もしかすると《カレン》じゃなく中の《咲夜》が弱っているのか?



咲夜が雪莉からの妖力で何とか生きながらえていたのなら辻褄は通る。



っ。




「遥…」




「っ!?」




突然雪莉の声が聞こえた。



驚いて雪莉を見ると虚ろな目で話しはじめた。




「私なら、もう大丈夫…だよ。

少し…目眩がするだけ…。

だから…置いて行かないで…」




「だが…そのままじゃ雪莉は…」




「自分の体が今どんな状態なのか

自分でも分かってつもり…。

だから…お願い…」




涙を浮かべゆっくりと立ち上がった。



そして花が無い桜の木に手をついた。




「遥、私の最後のわがままを

聞いてくれる…?」




「っ。

嫌だ…」




最後…なんて言って欲しくない。




「わがままならこれからも

いつだって聞く…。

だから…」




静かに涙を流す雪莉の後ろで桜の木が芽吹き始めた。