『お母さん!
兄さん!!』
幼子が慌てて駆け寄ろうとした時だった。
『うっ!』
幼子の側にいた一人が呻き声を上げて倒れた。
幼子が振り返るとそこには烏天狗一族がいた。
っ!!
目を疑った。
烏天狗一族の一人が血だらけのお父さんを抱えていた。
『私はここまで頼んでいません!!
直ちに撤退しなさい!!
あなた達がしている事は我々烏天狗の
一族の名を汚している!』
『若頭。
バカ言っては困ります。
あなたが言ったんでしょう?
ここ襲ってくれと』
『私の頼み事をことごとく
自分達がいいように使いましたね…』
どういう事?
お父さんとお母さん、それにみんなを傷つけたのは兄さんなの?
『兄さん…な、の?』
『っ!!』
『どうして…否定してくれないの?!』
『それは…。
…あなたの言葉が正しいからですよ』
『嘘…だよね?』
お願い首を振ってよ!!
『…いいえ。
私が全て計画した事…。
陰狼…あなたは私たち妖に
執着しすぎました。
それが今の結果を生み出しています。
あなたが向き合うべきなのは
嘘吐きな私ではありません。
人です』