『人にこんなことできない』
『なら一体誰が…』
二人の話す声なんて聞こえなかった。
部屋いっぱいに広がった血の海。
むせ返りそうだった。
それでもその時の私は部屋に一歩踏み入れた。
一歩踏み入れただけで血の匂いはさらに鼻を包んだ。
部屋を奥に進むと地下通路への階段がある。
そこには今使われていない牢獄がある。
嫌だ…。
進みたくない…。
進みたくないのに足は進み始める。
『待って!
あなたをこれ以上
進ませることはできない』
『僕らの使命はあなたを守ること。
これより先は陰狼の身が…!』
『大丈夫』
大丈夫じゃない。
そんなことは分かってる。
『なら僕らが守る』
『離れないって約束してよ?』
『ありがとう…』
地下通路への階段を降りて行くとだんだんと血の匂いが強くなっていった。
『…んね。
……に……きこ……』
『…い……。
わ……が……んな…』
声が聞こえる…!
この声はお母さんと兄さん…?
二人は体の小さな私を守りながらドアをゆっくりと開けた。
『『 っ!! 』』
はじめは身構えた二人だったが幼子のことを認識すると母親は少し緊張を解いた。
