遥(side)
『雪莉…(ボソッ)』
千年桜で俺が呟いた言葉。
「遥…。
雪莉は僕たちの事覚えてた?」
何処か顔色を変えて走っていった雪莉達の姿を見ながら冬紀が言った。
「…いいや」
「そっか…。
でも、雪莉相変わらずだね。
自分の事より相手のことを先に心配
するなんてさ…」
「…いや。
この世界に飛ばされた雪莉は気付いて
いない…。
自分が傷つくことで周りも
傷つくことを…」
「また無茶をしてしまいますね…」
そうだな…。
『私はみんなを守りたい…。
でも、私には力がないから…!』
『もぉ!
いい加減気付いてください!
あなたが傷つけばここにいる皆も
僕も傷つくんです!』
『僕達は君にそんな顔をさせるために
今まで戦ってきたの…?
僕はもう、仲間を失うのは嫌だよ!』
『俺達は雪莉に力がないなんて
考えたことはない。
雪莉あんたは凄い。
でも、一人で全てを背負い込もうと
するな…。
あんたはもう一人じゃない…だろ?』
『うん…』
陰狼(kagerou)に殺されかけた冬紀とユウを助けたのはまぎれもない雪莉だった。
それでもなお自分の事を否定する雪莉をユウは叱った。