私は自分の五つの力すべて嫌い。



生き物と話す力だっていい事ばかりが聞こえるわけじゃない。



地獄耳の力だって千里眼の力だって聞かなくていい事や見なくていいものを見てしまう。



予知の力だって知らなくていい未来が見えてしまう。



心を映す力はもっと嫌い。



誰かの心はそう簡単に覗いていいものじゃない。



この力を使いこなせていない時、不意に発動して嫌なものをずっと見てきた。




『キモチワルイ』



『近ヅクナ』



『消エロ』



口にしなくても聞こえてくる。



耳を傾けなくても聞こえてくる。



…大嫌いな五つの力。




〝雪莉ちゃん!

遥さん!

映像が映ったよ!〟




っ!



私は目を鏡の映像に移した。



初めに映ったのは火の海だった。



直ぐに大きな屋敷が焼けているのが分かった。



その火の海の前で膝をついているのは陰狼だった。



泣いて…いる…?



俯いて顔を手で覆い大粒の涙を流して。




〝あれは陰狼。

多分、七歳の時の…〟




七歳の時の?



でもこの映像は犬神の記憶であって、陰狼の記憶じゃない。



…陰狼が幼い時から犬神は陰狼の側にいた?



それしか考えられない。




「っ!!

ノイズが掛かり始めた…!」




遥の声にハッと顔を上げた。