桜ノ雫 ~記憶編~


「やっぱり優希には敵わないよ」




「…俺も輝には敵わないよ」




俺はみんなに嘘を吐いている。



今後動きやすくするためにね。



…なるほど、だから俺なんだね…輝。




「その顔…分かっちゃった?

どうして優希と組んだのか」




「分かったよ。

これからしようとしていることが

二人とも共通点があり

そしてバカなことだって。

…似てるからでしょ?」




「…やっぱり変わらない」




どこか安心したような輝の顔に俺は首をかしげた。




「何が変わらないの…?」




「…雪莉も遥もユウも冬紀も優希も

琶音に琴音にみんな何も変わらない」




「え?」




「…俺の知ってるみんなだ」




『俺の知ってる』?



どういうこと?



何も変わらない…つまり昔のまま。



でも俺はこっちの世界で輝とは…。



っ!!?



俺は…忘れていたんだっ。



元々がおかしいんだ。



俺はこの世界で輝にあったことがない。



なのにどうして輝は俺のこと知ってたの?



この世界で初めて輝にあった時からおかしかったんだっ。



この世界には元々《俺》というものは存在していない。



だから輝は勿論、雪莉も俺の記憶があることはおかしい。