桜ノ雫 ~記憶編~


だいだらぼっちはじっとこちらを見ている。



だが姿が見えていない。



気配はするが見えない。



だからだいだらぼっちはここを退かない。



ほんの二、三分の出来事なのに俺にはそれ以上の時間に感じられた。



そんな小さな出来事が今はただ嬉しいから。



俺は妖力を放出させながら結界を出た。




「こっちへ来い…!」




俺は走っている途中に変幻した。



だいだらぼっちは何も考えず俺を追いかけた。



…やはり知能は少ない。



俺はだいだらぼっちの攻撃を避けながら走った。



木から木へと飛び移り何度か捕まりそうにもなった。



攻撃がかすった時もあった。



だがそのまま俺は走り続けた。



どれくらい走ったのだろう。



だいだらぼっちは攻撃を仕掛けなくなった。



…おかしい。



何かが矛盾している。



山神は陰狼の式神だったはず。



陰狼は今どこにいるんだ?



それに、だいだらぼっちに指示を与えていたのは…。




っ!!



俺はまんまと手のひらで転がされていたのか?



俺は大きくバク転をし来た道を戻り始めた。