…どれだけ時間が過ぎたのだろう。
空にはもう朝日が昇っていた。
俺たちが任せられたのは確か護符の処理だったはず。
俺は隣で泣き疲れて眠る雪莉の前髪を優しく撫でた。
本当に真っ黒い髪だ。
陰狼も真っ黒だが雪莉のは漆黒…という言葉が一番会う気がする。
陰狼は…闇。
…髪はこんなに黒いのに肌は真っ白。
冬紀と一二を争うぐらいか…。
こうやって雪莉を近くで見たのは初めてだ…。
いつもは何気ない無自覚行動に目を逸らさざるおえないからな…。
雪莉の命の対価…。
このまま帰ってもいずれ雪莉は消える。
消えてしまう…。
それを分かっていてもあの約束をしてしまった。
はぁ…。
俺がぼーっとしていた時だった。
「っ!
遥、陰狼の式がくる…!」
「っ?!」
輝が近くに本家があると言っていたな。
…雪莉はいつから起きていたのだろう。
俺がジッと見ていたあとの方が助かるのだが…。
「何体かわかるか?」
「…足音は二つ…。
でも凄く大きな気配が一つ。
多分山神様を見回りに使ってる」
山神様か…。
厄介なのを見回りに入れたな…。
