〝…では聞く。
このまま俺が自我をなくし
オレが殺人鬼となりゆくのを見るのか
大きな賭けに出て愛する人を
取り戻すのか。
どちらだ〟
「それは遥を取り戻したいよ!
でも…!」
この子がシオンの娘だから分かる。
例え敵でも敵の生死を確かめる。
〝でもじゃない。
オレの事を考えるな。
大切なものはもう失えば二度と
戻ってこないんだぞ!〟
「…どうすればいいの?」
シオンの娘の目は迷いがなかった。
〝あんたがシオンの娘なら
絶対にできるはずだ。
桜九尾の姿に戻り祈るんだ。
強く強く願うんだ。
この体の主を返してくれと。
そして最後にこう唱えろ。
…汝をあるべき姿に。
我は願う…真実ともに〟
この言葉は颯人がオレを封印する時に使った言葉…。
陰陽師と桜九尾の二つの血が流れるこの子なら俺を完璧に封じる事ができる。
ただし《オレ》は出来ない。
賭けとはそういう事だ。
俺を完璧に封印する事でこの体は一時的に元の主へと返される。
が、本当に辛いのはこれからだ。
〝この体を乗っ取ろうとオレは
この体の主を蝕むだろう。
その苦しみにこの体の主は
耐え続けなければならない…。
この体からオレが出て行くまでは〟
