桜ノ雫 ~記憶編~




幸せは長くは続かない。



そう思い知る出来事がその日起こった。



紫乃が陰陽師に腕を斬られた。



そしてそれを取り戻しに行った紫乃は返り討ちにあい殺された。



オレ達は鬼故に人から天敵とされ妖から恐れられた。



オレは紫乃を失った事で我を失った。



詰まり…オレがオレでなくなった。



オレは名の通り殺人鬼と成り果て二回目となる京の町を滅ぼす寸前まで持ってきた。



それを止めたのはシオンだった。



自我をなくしたオレには何の言葉も届かぬ事を知っているのにそれでも語り続けてくれた。




『眼を覚まして!

童子!!

呑まれないで!!』




自我を無くしたオレにはその言葉も届かなかった。



そう。



オレの中には酒呑童子そのものと酒呑童子になる前の俺がいる。



俺の存在はオレより弱い。



一度飲まれればそう容易く元には戻れない。



それをシオンも知っているはず…。




『私は約束は絶対守るよ。

あなたを止めてみせる。

だから思い出して…?

そしてもう一度誰かを愛して…』




何故だろう声だけは聞こえる。



そしてシオンがやろうとしている事も…。