怒りも憎しみも何もこみ上げて来ない…。



それに言葉も普通に戻ってきている…。



初めは片言が混ざって聞きににくかったのに…。




〝確かにそうだな。

だが妖は約束を決して破らない。

そして信じた者に対して決して

裏切らない〟




「ックックック。

戯言をいいますね。

妖怪と人が心交わし合うなど

決してあってはならないんですよ」




陰狼は言葉の最後に合わせて酒呑童子の刀を突き返した。



その反動で遥の体は後方に少し怯んだ。



酒呑童子はそれに動じずそのまま華麗な動きで次の陰狼の攻撃を避けて後方に行った。




〝ならオレもこの体の奴も

そこにいる子もどうして出来たんだ?

人が妖と心を通わせたからだろ?〟




「ックックック。

それが不純なのですよ。

そんな汚れた命はいりません」




っ!!



汚れた命…。




〝あんたは何もわかってない。

この世に汚れた命や

いらない命なんて一つもない〟




「ックックック。

妖怪風情が言ってくれますね」




〝ッフ。

…妖怪風情…か〟




っ!?



酒呑童子は少し笑うと刀を構えた。



目は楽しむ…無邪気な子供のように。



このままだと遥が人殺しになってしまう。



それは絶対に止めないと!