桜ノ雫 ~記憶編~

遥(side)



ギィー…



主様の扉を開ける音で目が覚めた。



それは雪莉も同じみたいだ。




「では、行きましょう」




そして雪莉は立ち上がり陰狼の後ろへ着いて行った。



雪莉はただ陰狼の命に従うだけ。



陰狼は屋敷を出てある大きな池広場に俺達を連れだした。



そこには陣や儀式に必要なものを準備して置いていた。




「おや?

雪莉さん目に少し光が戻っていますね。

あなたも頑張りましたね」




「…俺は何もしていない」




「ックックック。

まぁ、いいでしょう。

どの道あなた方には

消えてもらいますので」




陰狼の目が冷たく笑った。




「陰狼…」




「なんでしょう」




「雪莉が正気に戻ることはないのか?」




「…分かりませんね。

私は操ることをできても

戻すことはできませんので。

それに、

この子には消えてもらうので」




もう、どうすることもできないのか?



冬紀達がここに来る気配もない。