「俺も弱くなったんだな…。
…雪莉。
心の何処かで
まだ狐桜雪莉が居るのなら聞いてくれ。
俺はあんたという存在に
たくさんのものをもらった。
人との接し方、心の底からの笑顔
時間の大切さ、大切な者の守り方、
そして、大切な人を愛するという事。
あんたに出会うまでの俺は確かに
冬紀達の言うように
無感情、無表情、無関心
だったのかも知れない。
だが、あんたに会えて…
たくさんのものを学んで分かった。
そしていつしかこの感情は
『愛しい』という感情になった」
「…」
「守ると何度も言った。
だが俺はいつも守れなかった。
その結果が今の状況。
俺は明日の早朝に正気を失い
簡単に言えば桶鬼遥は死ぬ」
「…怖い?」
「いいや。
自分の死より雪莉が…
…雪莉を救えないのが辛い」
「…バカ。
人の事心配してる場合じゃないのに」
「…あんたもだが?
いつもいつも俺をみんなを守ると
一人で突っ込んでは心配ばかり
俺達にかけさせる」
「なんのことを言っているの?」
「…分からなくていい。
あんたこそ死は怖くないのか?」
「死…?
…怖いよ、凄く凄く怖い。
だけど私の中にある記憶は
全て消滅している。
ただ分かるのは命尽きるまで主様の
命に従えという事だけ」
もう、ここにいるのは雪莉じゃないのかもしれない。
最後になるから…伝えよう。
意味がないのも知っている。
だが、伝えないと後悔する。
「雪莉…」
「私はあなたの知っている
雪莉じゃない」
「知っている。
だが、聞くだけでいい。
俺は…
……狐桜雪莉、あんたが好きだ」
