桜ノ雫 ~記憶編~

なんとかして雪莉を戻さないといけない。



しかし時間がない。




キィー…



思い訛りが開くような音。



鉄格子…だな。



しかも呪詛付きの。



目の前には沢山の地下牢が張り巡られていた。



呪詛の鉄格子は俺や雪莉だって触るとただでは済まないはず。



っ!!



まさか…!




「雪莉待て!

あんたとてそれを触れば

ただでは済まない」




鉄格子にそのまま手を伸ばし雪莉は聞く耳を持たなかった。



バチッ




雪莉は迷わず鉄格子へ触れた。



鉄格子から雷の残骸が散らばるほど強い電気だ。



…雪莉は顔一つ歪めず鉄格子を開けた。



そして入れと言わんばかりに光なき目で見てきた。



雪莉の手は赤く血が垂れていた。



俺はおとなしく牢屋に入った。




「おやおや。

その子相手だと操り人形の様に

動くのですね」




「…」




「ックックック。

明日の早朝あなた方の力を

呼び起こす事にしました。

それには準備がいる。

一晩だけこの牢屋で

過ごしてもらいますのであしからず」




と言って雪莉の方を向いて笑った。




明日の早朝に…。



俺は消える…。



雪莉も…。




「すみません。

中へ入っていただけますか?」




またもや雪莉は頷き牢屋へ入ってきた。




「ではまた明日の早朝に…」