遥(side)
陰狼に連れてこられたのは山奥の大きな屋敷。
「ここは神矢家本家の別荘。
中は妖怪を一切取り入れない
術式の部屋ばかりです。
あなたの妖力は無いも同然なので
無駄な抵抗はよして下さいね」
…。
陰狼の式神に手を術札で縛られた。
こいつは俺の中の《酒呑童子》に興味があるのだろう。
雪莉…。
動く屍の様な雪莉。
「あんたは…雪莉をどうしたいんだ?」
「この子をですか?
ックックック。
力を手に入れる…
というところでしょうか」
力を!?
っ…。
「やはりあんたは…」
「えぇ。
御察しの通りですよ」
どうやってきたかは知らないがこの陰狼は俺達の世界の陰狼だ。
…厄介だ。
俺達の弱点を知られている。
「では、雪莉さん。
この人を
牢屋に入れておいてくださいね。
私も後から行きますので」
っ?!
雪莉は黙って頷き俺を屋敷の中に連れ込んだ。
どんどん進み地下へ降り地下牢の前に来るまで雪莉は勿論俺も口を開かなかった。
…始めてきた場所なのに雪莉は迷わずここへ連れてきた。
陰狼が雪莉を選んだのは俺への侮辱だけではなくもう雪莉には俺の言葉は届かないほど陰狼の呪詛にハマっていると教えたかったのだろう。
