「まあ、果たせても
帰らないといけないんだけどね…」
「そっか。
雪莉には言わなくていいの?
雪莉きっと悲しむよ?」
「はい。
百の承知です。
だからその時はうまく口車を
合わせてくださいね♪」
精一杯明るく言おうとしているユウはとても辛そうだった。
そうか…。
忘れていた。
もう、とっくに期限が過ぎていたんだな…。
幸せな時間があり過ぎて気づかなかった…。
…いや。
目を……そらしていたのかもしれない。
「雪莉の記憶からは
俺達が消えると
俺達の存在がなくなるだろう」
俺達の時代には雪莉がいないことになるからな。
できていた渦も消える。
多分、雪莉はここに俺達がいたこと共に俺達と交わした契約も忘れる。
そうすれば、桜の紋様も消え俺達と雪莉はただの赤の他人。
雪莉にとって一番ハッピーエンドなのかもしれない。
だが、確実に俺達の世界のバランスが崩れ壊れる。
そして雪莉もその後長くはない。
俺たちが消えても桜九尾の呪いは残り続けるからからだ…。
「遥はそれでいいの?」
いつもより少し低い輝の声に少しだけ決意が揺らいだ。
いいわけない。
産まれて初めて人を愛せた。
愛すことを教えてくれた、そんな人を失うんだ。
だが、このまま彼方の世界に陰狼を放置しておくわけにもいかない。
ましてやこの世界の住民でない俺達がここにとどまることも許されない。
「これが約束だからな」
琶音と琴音との…。