桜ノ雫 ~記憶編~


腕の中の雪莉の肩が少しゆれた。




「…でも俺はあの人と離れたくない。

ずっとそばにいたいんだ…。

これも…叶わぬ願いだが…」




「…そんなこと……」




俺はそっと雪莉から離れて言葉を遮った。




「優希…。

あんたは何を抱え込んでいるんだ?

一人で…ずっと暗闇の底で。

まるでかつての俺のように

誰にも頼らず、一人で生きている。

反論を乞うことを前提でいう。

俺に…俺達に頼れ」




「っ…」




「確かに頼りない。

あんたが持っている過去は

俺達でどうこうできるわけでもない。

だが、一人で抱え込むな…!」




俺は気づけば必死になっていた。



何故こんなに心配になるのか思い出せもしない。




「…バケモノが記憶を消した理由…。

…知りたい…??」




っ?!



記憶を消した理由…?!




「…バケモノは失うつらさに

耐えられなくなった。

大切だと思ったほど

失なった時の悲しさは強かった。

だからバケモノは大好きな人達との

記憶を全て消したんだ。

勿論自分の記憶もね…」




…失うつらさに耐えられなくなった…。