桜ノ雫 ~記憶編~



「逃した幼子がたどり着いたのは

祓い屋の本家《神矢》家。

そこで幼子は《飼われる》ことに

なった。

それからの扱いはゴミ以下、

祓い屋の実験物とし、人としても

妖怪としても扱われなかった」




…人としても妖怪としても扱われなかった。



辛い苦しい悲しい。



たくさんの感情が伝わってきた。




「その扱いは十年続いた。

一歳となった幼子を祓い屋から解放

したのはある一人の鬼だった」




っ!?



鬼…まさかっ!?




「その鬼の名は…酒呑童子」




ドクンッ。



心臓が跳ねた。




「酒呑童子は神矢本家を潰した。

その騒動の間に幼子は逃げた。

今度は自分の足で遠くへ遠くへと…。

そしてたどり着いたのはある村だった」




「っ!!」




優希は驚いていた。



話すつもりのなかったことだったのか?




「そこでの扱いもひどかった。

親がいない事での蔑んだ目。

無意識的な力の発動による

《バケモノ》扱い。

いつしか一歳の幼子は…バケモノは…

思うようになった…。

自分は、なぜ生まれてきたのか?

《バケモノ》である自分には

存在意味がない。

《バケモノ》と呼ばれ何百年か

たったある日の事。

バケモノはある少女に会いました。

自分と同じくらいの半妖の彼女。

彼女はバケモノの話を聞いた後、

泣きながら『ごめんね』と謝った。

理由を聞くと

『私も人の血が流れてるから

その人達と同じだから…』

と言ってまた泣いた。

綺麗な優しい涙を見たのは

初めてだった。

いつの日か涙を忘れていたバケモノには

その瞬間涙が溢れ出た。

止められないその涙は今までの

苦しみが詰まって出てきたのか、

それとも自分のために

泣いてくれる子がいたことが

嬉しくて泣いたのか分からなかった」