パチ、パチ、パチ…。
っ!?
木影から手を叩く音とともに一人の人が出てきた。
暗い夜に呑まれるような黒い髪…。
前髪で少し隠れている方目もそうでない目も同じように闇に染まっている。
「陰…浪…」
「雪莉?!
陰狼の事覚えてるの?!」
え?!
「わ、分からない。
でも…」
気づけば私は震えていた。
恐い…。
恐怖が私を襲った。
どうしてだか分からない。
でも…震えて…。
私は立っていることができなくなって崩れ落ちそうになった。
「…大丈夫か?」
崩れ落ちる前に遥が抱き寄せてくれた。
「…うん」
「ックックック。
また、お会いしましたね」
「陰狼…!」
「ックックック。
馬鹿な半妖が私のしていることに
いつ気づくのかと首を長くして
待っていたのですが…
気ずいても私の仕業とはわからない。
ックックック。
馬鹿になったんじゃないんですか?」
馬鹿に《なった》…?
